お世話になっております。

コピーライティングマーケターの一式未来です。

 

以前、下記の記事で、コピーとは「その前提となる課題設定」によりその優劣が大きく左右されるという話をさせて頂きました。

 

一流のコピーを書く為には「優れた課題設定力と発見力」が必要

 

そもそも、コピーとは、何かしらの問題(理想と現実のギャップ)を解決する為の問題解決策の一つに過ぎません。

 

従って、その前提となる課題設定がズレてしまうという事は、間違った診断(課題設定)を行い、結果的に相応しくない薬(コピー)を出してしまうようなものなのです。

 

これは何もコピーに限った話ではなく、あらゆる問題解決策(商品・企画・戦略等)に共通した話です。

 

故に、どれだけ素晴らしい問題解決策を作り上げても、その課題設定(照準)が誤っていれば“本末転倒”と言えるのです。

 

そんな中で今回は、その課題設定に対して、強い問題解決策(コピーや商品、企画・戦略等)を打ち出す為の「コンセプト」というものをお伝えしていきたいと思います。

 

このコンセプトという概念と使い方を心得れば、あなたが今後、新たなコピーや商品、企画・戦略等を作り上げる際の大きな武器(思考力)として頂けるはずです。

 

基本的に、あらゆる問題解決において、「課題設定」と「コンセプト」の両輪を的確に設定さえできれば、その問題の大方はクリアできたようなものと言っても過言ではありません。

 

そして、今回は、その後者「コンセプト」を学びにいくのです。

それでは、参りましょう。

「ビジネスにおけるコンセプト」の定義とは

先ず、コンセプトの定義をしっかりと押さえておきましょう。

 

コンセプト(concept)

1 概念。観念。
2 創造された作品や商品の全体につらぬかれた、骨格となる発想や観点。「コンセプトのある広告」

(デジタル大辞泉より)

 

ここであなたに質問です。

 

「ビジネスにおけるコンセプトとは何でしょうか?」

 

私が実際に見てきた中でも、コンセプトという言葉を日常的に使っている人であったとしても、この質問に瞬時かつ的確に答えられる人は殆どいませんでした。

 

それくらい多くの人々が、この「コンセプト」という言葉を感覚的に理解し、使用しているのです。

 

ここで、私が考えるその「答え」を延べておくと、以下の通りとなります。

 

ビジネスにおけるコンセプト

強い問題解決力を生み出す揺るぎない大黒柱

 

上記のデジタル大辞泉による定義の二つ目と、ほぼ同義のように見えるかと思いますが、ここでの違いは、そのコンセプトを定める目的にまで踏み込んでいる点にあります。

 

つまり、強い問題解決力を生み出す為に必要な大黒柱こそが「ビジネスにおけるコンセプト」であるという事です。

 

大黒柱とは、いわば「幹」の部分であり、決して揺らぐ事があってはならないものです。

 

この「幹」が駄目になってしまうと、その周囲にある「枝葉」も全て駄目になってしまうからです。

ビジネスにおけるコンセプトの活用イメージ

ただ、問題解決策検討の現場において最もよくあるのが、そもそもコンセプト自体が「定められていない」もしくは「意識されていない」といったケースです。

 

これでは、それぞれの問題解決策(枝葉)のベクトルがバラバラとなってしまい、本来解決しなければならない問題や課題に対する解決力が弱まってしまうのです。

 

時には、それぞれの問題解決策(枝葉)同士が互いに足を引っ張り合ってしまう事さえあるくらいです。

 

よって、以下のようなイメージでコンセプトを定めてあげる必要があるのです。

 

問題点
とある田舎のカフェの売上が低迷している。

課題設定
競合カフェとの差別化による地域住民からのリピート率拡大。

コンセプト(大黒柱・幹)
田舎にはない、地域住民の憧れる「近未来型のカフェ」を打ち出す。

問題解決策(枝葉)
・近未来を彷彿させる内装にリニューアルする。
・近未来を彷彿させる外装にリニューアルする。
・近未来を彷彿させる店名・看板に刷新する。
・近未来を彷彿させるコピーで宣伝する。等々…

 

このようにあらかじめ、設定した課題に対するコンセプト(幹)を定めてさえいれば、それぞれの問題解決策(枝葉)は全て、そのコンセプト(幹)を通じて一直線のベクトル(強い解決力)となり、課題や問題点に向かっていく事ができるのです。

 

さて、ここまでの内容を踏まえて「ビジネスにおけるコンセプト」のイメージは掴んで頂けているでしょうか。

 

もしそのイメージが掴みにくければ、一度、上記の例におけるコンセプト(=近未来型のカフェ)の項目をあえて削った上で、問題解決策を考えてみて下さい。

 

コンセプトが欠けるだけで、その問題解決策のベクトルが一直線に定まりにくくなる事が、直感的にお解り頂けるかと思います。

「ビジネスにおけるコンセプト」設定による効果

では、あらためて、「ビジネスにおけるコンセプト」設定による効果を整理すると、以下の通りとなります。

 

  1. 複数の問題解決策のベクトル(力)を一直線に結集できる
  2. 具体的かつ既成概念に捉われない問題解決策を検討できる

 

その効果を踏まえて、「強い問題解決力」を生み出す事ができるのです。

ここでは、後者の2について補足をさせて頂きます。(前者の1については前項で解説した通り)

 

先ず、コンセプトを設定する事無く、問題解決策を定めにいってしまった場合に陥ってしまうよくあるパターンが下記です。

 

問題点
とある田舎のカフェの売上が足りていない。

課題設定
競合カフェとの差別化による地域住民からのリピート率拡大。

コンセプト(大黒柱・幹)
田舎にはない、地域住民の憧れる「近未来型のカフェ」を打ち出す

問題解決策(枝葉)
・競合のカフェにはないメニューを用意する。

・リピートさせる為のクーポンを配布する。
・地域住民の購読メディアに広告を掲載する。
・集客を増やす為のキャンペーンを行う。等々…

 

このように、コンセプトを設定する事無く定められた問題解決策は、その具体性に欠け、誰もが思いつくような既成概念上のものになっている傾向にあります。

 

よって、課題設定の次に然るべき「コンセプト」を差し込む事で、その後に続く問題解決策をより「具体的かつ既成概念を超えたもの」にする事ができるのです。

有名CMの分析によりコンセプトを見抜く目を養う

では、「ビジネスにおけるコンセプト」を設定する力を養うにはどうすれば良いのか。

 

当然、マーケティングフレームワーク等を使いこなせるようになる事も重要ではありますが、やはり「実践」以上に勝るものはありません。

 

ただ、実践と言っても、その機会自体がそう多くはないかと思います。

そこでお勧めの方法が、有名CMの分析によりコンセプトを見抜く目を養うといった、いわばケーススタディ(事例研究)です。

 

特段、分析する対象は何でも構わないのですが、その「レベルの高さ」と「身近さ・手頃さ」から、ここでは有名CMをその題材とさせて頂きます。

 

注意点としては、あくまでも私自身の見解であるという事です。

ケーススタディ①:ペプシネックスゼロCM『桃太郎「Episode.ZERO」』

こちらは、俳優の小栗旬さんが出演するサントリー「ペプシネックス ゼロ」のCMです。

問題点

元々ペプシは、コカコーラという絶対的王者に挑む「チャレンジャーブランド」として立ち上げられました。

 

従って、顧客のターゲット層も若者を中心としたチャレンジャー層となっており、そういった層を囲い込んでいく事で、今ではコカコーラーのライバルブランドへと成長する事ができたのです。

 

しかし、このCMが打たれた2014年頃は、ペプシのシェアが低迷状態にあり、いわばそれがペプシの問題点でした。

 

課題設定

そこで、その課題として設定されたのが、「チャレンジャーブランドとしての価値の低減」だったと考えられます。

 

もはやコカコーラーと遜色のないレベルまでのブランド力を持ったペプシは、その反面「チャレンジャーブランド」として風貌を失ってしまっていたのです。

 

結果的にペプシのターゲット層である若者を中心としたチャレンジャー層が「顧客離れ」を起こしてしまっていたのではないでしょうか。

 

(そもそもコーラやお茶等を代表とする飲料水は、商品の機能的価値による差別化が難しい為、このようなイメージ的差別化がより重要となります)

 

コンセプト

従って、そこで設定されたコンセプトは、「永遠のチャレンジャー」と考えられます。

 

人々にとっての「不動のチャレンジャーブランド」としてのイメージ訴求(ブランディング)を行う事で、課題解決を狙ったのだと思います。

 

問題解決策

そして、上記コンセプトを元に、主に下記の問題解決策が打ち出されています。

【解決策①:CMストーリー】

視聴者に対し、昔話の桃太郎を「チャレンジャー」として認識を改めさせる事で、ペプシ自体も「チャレンジャー」として再認識させる為のストーリーが組まれています。

 

【解決策②:コピー】

CMの後半にある「自分より強いヤツを倒せ。」というコピーは、世間の潜在的なチャレンジャーを呼び覚ますのと同時に、「チャレンジャー達を応援するドリンク=ペプシ」というイメージを視聴者に刷り込もうとしています。

 

余談ですが、エナジードリンクのレッドブルは、よりエクストリームなチャレンジャーを応援するドリンクとしてブランディングが図られています。

 

彼らのCMや広告が、エクストリームスポーツ(BMX、マウンテンバイク、ブレイクダンス等)に紐づけられる事が多いのはその為です。

 

【解決策③:コンセプトワード】

最大の問題解決策とも言えるコンセプトを一言で表現するコピー(コンセプトワード)は、CM終盤の商品コマの手前にある「FOREVER CHALLENGE」と言えます。

 

CMイメージに合わせた英語での表現とフォントがクールですね。

 

【解決策④:商品の本質的価値】

ペプシという商品が持つ本質的価値が、チャレンジャーの喉の渇きを潤すモノとして位置付けられています。

ケーススタディ②:サッポロ生ビール黒ラベルCM「大人エレベーター」

こちらは、元プロ野球選手の黒田博樹選手と俳優の妻夫木聡さんが出演する、サッポロ生ビール「黒ラベル」のCMです。

問題点

ビール業界では、発泡酒や第三のビール、プレミアムビールの登場等で、従来から存在するビール(フラッグシップ)の売上が低迷しているという背景があります。

 

サッポロ生ビール黒ラベルも、まさにその内の一つでした。

 

それらの発泡酒や第三のビール等の新たな競合等にも立ち向かい、売上を改善する必要があったのです。

 

課題設定

そこで、その課題として設定されたのが、「ブランド価値の再定義」だったと考えられます。

 

サッポロ生ビール黒ラベルは1977年、未だ家庭用生ビールが浸透していない時代に発売され、まさに家庭用生ビール市場を切り開いた存在と言っても過言ではありません。

 

そして、発売当初より一貫して「完璧な生ビール」を目指し、現在もなお改良が重ねられています。

 

それにも関わらず、その”こだわり”(ブランド)が時代と共に人々に認知されなくなってきていたのです。

 

コンセプト

従って、そこで設定されたコンセプトは、「カッコイイ大人」と考えられます。

 

「カッコイイ大人(over40)」と「カッコイイ大人に憧れる若者(under40)」こそが飲んで価値のある”完璧な生ビール”としてブランドを再定義する事で、競合と差別化を図り、課題解決を狙ったのだと思います。

 

ここでのポイントは、競合はビール離れが進む若者をターゲットに絞ったブランディング(サントリーモルツはEXILEを起用)を中心に展開する中、サッポロ生ビール黒ラベルはあえてその逆である「大人」と、その大人を通じた「若者」を攻めに行った点ではないでしょうか。

 

これは「歴史」と「こだわり」のあるサッポロ生ビール黒ラベルだからこそ可能な、まさに差別化されたブランディングであり、大変見事なコンセプトだと思います。

 

問題解決策

そして、上記コンセプトを元に、主に下記の問題解決策が打ち出されています。

【解決策①:CMストーリー】

大人代表である黒田選手に対して、憧れの眼差しで懸命に話を聞く若者代表の妻夫木さんという構図により、「カッコイイ大人」が描写されています。

 

それによって、視聴者に対して、サッポロ生ビール黒ラベル自体もそういった人々に飲まれる「カッコイイ大人のビール」として認識させる効果があると考えられます。

 

【解決策②:コピー】

CMの後半にある「丸くなるな、★星になれ。」というコピーは、世間にカッコイイ大人を増やし、「カッコイイ大人達を応援するビール=サッポロ生ビール黒ラベル」というイメージを視聴者に刷り込もうとしているのではないでしょうか。

 

同時にそのコピーは、発売から数十年が経過した今もなお、落ち着く事なく改良を続けている当商品の機能的価値にもリンクしています。

 

【解決策③:コンセプトワード】

最大の問題解決策とも言えるコンセプトを一言で表現するコピー(コンセプトワード)は、CM中に終始繰り返される「大人」と言えます。

 

【解決策④:商品の本質的価値】

サッポロ生ビール黒ラベルという商品が持つ本質的価値が、カッコイイ大人とそんな大人に憧れる若者の為のビールとして位置付けられています。

ケーススタディ③:ナイキジャパンCM「ナイキベースボール宣誓」

こちらは、ナイキジャパン社の企業としてのブランディングを目的としたコーポレートCMです。

問題点

ナイキは今でこそスポーツブランド界の王者的立場に君臨していますが、実は名立たるスポーツブランド達(アディダス・プーマ・ミズノ・asics等)に挑む後発ブランドでした。

 

それにも関わらず、その全てを出し抜き王者の座を獲得できたのは、ナイキというブランドが持つその「革新性」という部分が大きいと言われています。

 

ナイキはいつの時代も、古いスポーツ認識を変え、新たな認識・価値・ライフスタイルを啓蒙する事で、スポーツブランド界に新たな市場を創り出し、それにフィットした革新的な商品を提供してきたのです。

 

それを象徴しているのが、ナイキのCMやスポンサーとしてサポートする選手(広告塔)です。

 

前者に関しては、今回の事例も含めてエッジの利いたCMが多いですし、後者については、マイケルジョーダンを除けばお世辞にも行儀が良いとは言えない選手が多いのです。

 

例えば、テニスのマッケンローで言えば、試合中に審判によく文句をつけていました。

 

ナイキにとっては、そういったパフォーマンスこそが、自社のブランドが持つ保守的勢力への「革新性(反骨心)」を表現するのに打ってつけだった訳です。

 

ただ、王者になってしまった以上は、世間の見る目は自然と「NO.1」という見方が強くなります。

 

そこを問題として捉えたのが、このナイキであり、実態はNO.1でありつつも、企業イメージとしては「NO.1のナイキ」ではなく、「革新的なナイキ」で在るべきとしたのです。

 

課題設定

そこで、その課題として設定されたのが、「NO.1イメージに圧される革新的イメージの保持」だったと考えられます。

 

コンセプト

従って、そこで設定されたコンセプトは、「日本的スポーツ文化への反旗」と考えられます。

 

日本人が大切にしてきたスポーツにおける「礼儀」や「協調性」、「潔さ」等の文化に対し、あえて反旗を翻す事で、「異端児(革命児)」のような立場を強調し、課題解決を狙ったのだと思います。

 

問題解決策

そして、上記コンセプトを元に、主に下記の問題解決策が打ち出されています。

【解決策①:CMストーリー】

日本的スポーツ文化の象徴とも言える野球をテーマにし、かつその中でも特に厳粛な「選手宣誓」を利用して、ナイキの日本的スポーツ文化への宣戦布告をその選手に代弁させるという構図が組まれています。

 

【解決策②:コンセプトワード】

最大の問題解決策とも言えるコンセプトを一言で表現するコピー(コンセプトワード)は、このCMの場合はこの選手宣誓全てであり、纏めると「宣戦布告」と言えます。

 

【解決策③:企業の本質的価値】

ナイキという企業が持つ本質的価値が、頂点を目指す革命児・異端児・反逆者達のスポーツエンジンとして位置付けられています。

 

 


 

さて、今回は上記の3つのケーススタディをご紹介しつつ、「ビジネスにおけるコンセプト」について解説させて頂きました。

 

繰り返しになりますが、基本的に、あらゆる問題解決において、「課題設定」と「コンセプト」の両輪を的確に設定さえできれば、その問題の大方はクリアできたようなものと言っても過言ではありません。

 

また、今回のケーススタディのように、普段何気なく見ているCMや広告等において一見「何の意味があるのか」と思えるようなものでも、その裏には、その企業の明確な戦略やコンセプトが隠れているのです。

 

今回のケーススタディではその想定される「答え」を掲示させて頂きましたが、その他の題材に対して、自らその「答え」について探る習慣を持つ事も、コンセプト設定力を大きく養う上では重要な事です。

 

以上、是非ご参考として頂けると幸いです。

 

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引き続き、お付き合い頂けますと幸いです。

 

一式未来

 

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